はじめに
こんにちは。mcsのT.Mです。
今回は、Salesforce運用担当者がよく直面する課題の一つである、重複データの管理についてお話しします。
「同じ取引先や担当者、リードがシステム上に何件も登録されている」ーー
みなさんの会社の顧客データは、こんな状況になっていませんか…?
Salesforce上で取引先や担当者のデータ重複が発生すると、以下のような問題が起きます。
- 顧客情報の管理が煩雑
同じ取引先や担当者・リードが複数登録されることで、商談等の情報が分断され、営業やマーケティング部門の作業が非効率になる
- レポートやダッシュボードの精度が低下
重複データにより分析結果が正確でなくなる
- 信頼性の低下
顧客から見た場合、「顧客情報が適切に一元管理されていない」と受け取られ、信頼を損なうリスクが高まる
こうした課題を解決するために役立つのが、Salesforceの標準機能である
「重複ルールと一致ルール」、そして「マージ機能」です。
この記事では、これらの設定方法を画面キャプチャ付きで解説し、
運用を成功させるためのポイントやよくあるケース・ルール設計例も紹介します。
重複ルールと一致ルール
重複ルールと一致ルールを設定することで、Salesforce上で重複レコードを検知し、登録の制御やアラート表示などによって重複の発生を抑制できます。
一致ルール:重複レコードと判断するための条件
重複ルール:重複するレコードの登録・更新があった際に、どのような対応をするかの設定
大まかには上記のような設定内容となり、
2つのルールを組み合わせて、データの重複管理とマージ処理(重複データの統合)を行います。
一致ルールとは
一致ルールは、データが「一致している」と見なす条件を定義する機能です。
この条件に基づき、Salesforceはデータの重複を検出します。
一致ルールは、重複を判定する基礎となるルールであり、「どの条件で重複と見なすか」を詳細に設定します。
対象オブジェクト
- 取引先
- 取引先責任者
- リード
- 個人取引先
*上記標準オブジェクトのほか、カスタムオブジェクトにも設定可能
一致するフィールドの指定
一致するデータと判定するための、比較対象項目を指定します。
例)
取引先の「会社名」や取引先責任者の「メールアドレス」
一致方法の選択
・完全一致:フィールドの値が完全に一致する場合に重複と見なします。
例)
メールアドレスが「example@domain.com」で完全一致する場合
・あいまい一致:一部の条件が一致する場合に重複と判定します。
例)
名前の一部が似ている場合や電話番号が一部一致している場合
設定例
・取引先責任者
「名前」「メールアドレス」の両方が一致した場合に重複と判定。
・取引先
「会社名」「電話番号」の両方が一致した場合に重複と判定。
一致ルールの設定により、自社のニーズに合った重複管理が可能となります。
重複ルールとは
重複ルールは、一致ルールに基づいてデータの重複を検出し、その際にどのような動作を行うかを指定する機能です。
重複ルールを設定することで、ユーザーの操作時に重複データを検出し、アラートを表示したり、登録・更新を制限することが可能です。
設定できる内容としては、下記のようなものがあります。
アクション
レコードの作成時・更新時それぞれのケースにおいて、重複と判定された場合の動作を、下記のパターンで設定できます。
- 登録・更新をブロックする
- 登録・更新は許可するが、保存時にアラートを表示する
- 登録・更新は許可し、保存後に重複可能性があると表示(レポート)する
ルールの動作条件の設定
基本的に、重複ルールは他レコードと重複しているレコードの作成・更新時に作動します。
ただし、特定のケースにおいてルールと制御を作動させたくない場合、レコード項目やユーザプロファイル等をもとにルールの動作条件を設定することができます。
<設定例>
・営業プロファイルのユーザは、登録・更新をブロック
営業部門がリードを登録する際に、「この会社名と電話番号の取引先が既に存在します」とエラー通知をする。
・システム管理者プロファイルのユーザは、レポートのみで登録・更新を許可
例外的にレコードの更新が必要な業務シーンがある場合を考慮し、システム管理者は登録・更新を許可する。
上記のように、動作条件やアクションが異なる場合、複数の重複ルールを作成する必要があります。
これらのルールを適切に設定することで、データの一貫性を維持しながら、ユーザーが使いやすい運用を実現できます。
次章では、これらのルールをどのように設定するかを詳しく解説します。
設定方法
ここでは、Salesforceで一致ルールと重複ルールを設定する具体的な手順を解説します。
一致ルールの設定手順
①Salesforceの設定画面を開き、「重複管理」 → 「一致ルール」 を選択する。
②「一致ルール」画面で「新規ルール」をクリックする。
③対象オブジェクトを選択する。
④比較する項目を追加(例:会社名、電話番号) → 一致方法を選択(完全一致、またはあいまい一致)する。
⑤保存後、「有効化」を押下しルールを有効化する。
重複ルールの設定手順
①「設定」→「重複ルール」→「新規ルール」 で新しい重複ルールを作成する。
②共有ルールを適用/スキップを選択する。
→ユーザがアクセスできるレコードの範囲内で重複を検出するか、アクセス権関係なくすべてのレコードで重複を検出するかを選択します。
③重複時に登録を「許可する」または「ブロックする」を選択する。
→ 許可する場合、「アラート」「レポート」の表示制御を選択する。
④使用する一致ルールを指定する。
⑤ルールが動作する条件を指定する。
例)特定のプロファイルやレコードタイプを対象から除外する場合
⑥設定したルールを「有効化」ボタンで有効化する。
挙動確認
設定後、実際にデータ登録時にルールが適用されるか確認します。
①「許可しない」を選択した場合:登録・更新をブロックする。
②「アラート」にチェックをした場合:登録は許可するが、保存時にアラートを表示する。
③「レポート」のみにチェックをした場合:登録は許可するが、保存後に重複可能性の表示を行う。
※上記表示が出ない場合は、Lightningレコードページを編集して「潜在的な重複」コンポーネントを配置することで、表示が可能になります。
重複データのマージ処理
重複ルールによって重複レコードと判定されたデータは、Salesforceのマージ機能で統合することができます。
マージ機能は、重複ルールにて重複と判定されたレコードにのみ適用できます。
主な機能の内容は、以下の通りです。
- 主レコード(残すデータ)を選択し、他の重複データを削除し主レコードに統合
- 両レコードの項目で差分が生じているものについては、マージ画面上でどちらの項目を残すか、項目ごとに選択
- 消すレコードに紐づいていた関連レコードは、参照先のレコードがマージ先のレコードに自動的に変更
具体的な操作手順を下記にて説明します。
マージ処理の手順
①レコードページに、重複可能性についての表示がされる。
②「重複を表示」から統合する対象データを選択する。
③残すレコード(プリンシパルレコード)を選択し、各フィールドのデータを選んで統合する。
④「保存」をクリックして完了。
マージ元のレコードは削除され、関連レコードは統合先のレコードに紐づけられます。
よくある重複ルール設計のケースと考慮ポイント
外部とのシステム連携処理が行われている場合
名刺管理ツールや基幹システムなど、外部システム/ツールとの連携により対象オブジェクトへの新規作成・更新が行われる場合、重複ルール設計においては連携処理への影響考慮が必要になります。
重複ルールで重複データの登録をブロックしたり、アラート表示設定したりしている場合、
連携処理を通じて新規に取引先責任者を登録しようとすると、重複ルールが適用され連携処理が完了せずエラーが発生する可能性があります。
このようなケースにおいては、
連携処理を通して行われる登録・更新は重複ルールの動作対象外とする
といった対応が必要です。
ユーザ項目やプロファイルを動作条件を指定して、連携に使用されるユーザ以外のユーザによる操作の際のみでルールが起動するようにする等、条件を工夫・調整をするとよいでしょう。
例外レコードへの対処
グループアドレスでの登録や、関連会社や関連団体の担当者で、複数の取引先に所属する同一メールアドレスの担当者がいる場合など、
通常は重複データとして判定するが、例外的に別登録を許容する必要がある場合
には例外的な処理ができる余地を残しておくとよいでしょう。
重複判定の除外対象となるようなフラグ項目等を用意して、重複ルールの評価対象外になるようにメンテナンスをかけられるように逃げ道を残しておく等、
業務進行に支障が出ないように、例外ケースの対応ができる方法を用意しておくことがおすすめです。
マージ処理は特定の部門で実施
Salesforceの重複マージは、便利で重要な機能である反面、一度統合したものを元に戻すことはできないため、慎重に行う必要があります。
- 本当に重複データなのか
- 残すレコードや項目の値はどちらにすべきなのか
等、詳細を確認をしたうえでマージを適切に行う必要があります。
そのため、重複ルールで登録ブロックやアラート表示の設定をしたうえで、
それでもできてしまったレコードに対するマージ処理は、顧客情報を管理する特定部門のユーザのみに絞って運用を行うのがおすすめです。
マージ処理には、対象オブジェクトレコードに対する削除権限が必要になるため、その権限を必要なプロファイルのみに割り当てて運用をしましょう。
また、よく生じるケースとして、データの重複について現場のユーザがあまり課題意識を感じておらず、
「マージ依頼をせずにそのまま重複を放置し続けてしまう」
といったことが挙げられます。
このような場合、運用フローにもよりますが、
例えば商談の受注処理など、業務を進めるうえで必ず必要な処理を行う際に、
重複を解消しないと先に進めないようなシステム上の制御を構築してしまう
というのも一つの方法です。
まとめ
Salesforceの一致ルールと重複ルールを活用することで、重複データを防ぎ、運用効率を向上させることができます。
重複ルールを用いた重複管理の運用を検討する際には、
- システム連携や自動化処理に影響を与えないように考慮し
- 業務進行に支障をきたさないレベルで
- できる限り重複データの発生が起こらないよう強めの制御をかける
以上のように重複の発生ケースを最小限に抑えつつ、そのうえで生まれてしまう重複データについては
- 現場ユーザからマージ依頼をもらうフローにする
- 可能であれば、ユーザにとって避けて通れない業務の中に、重複チェック~マージによる解消を組み込む
- 特定の権限を持った部門にて適正な判断を行ったうえでマージ対応を行う
といった運用で重複管理を行うと良いでしょう。
どのようなルール設計にすればよいのかは各企業のデータと業務ルールによって様々ですが、
できる限り重複を生まない / 放置しない仕組みを作ることは顧客管理の側面から重要なポイントです。
重複ルールを活用し、顧客データの重複が発生しにくい仕組みと適切に解消する運用プロセスを構築することで、Salesforceのパフォーマンスを最大限に引き出しましょう。
Salesforceを導入したものの、機能が多すぎて使いこなせない、設定やカスタマイズが難しい、または社内リソースが不足していると感じていませんか?合同会社mcsは、そんなお悩みを解決するために、Salesforceの導入・運用支援を行っています。経験豊富なチームが、貴社のビジネス成長をサポートします。まずはお気軽にご相談ください。