Salesforce導入最後の壁!失敗しないデータ移行のポイント

目次

はじめに

こんにちは。mcsのT.Mです。

「SFA(営業支援システム)をSalesforceに切り替えるプロジェクトを担当しているものの、
既存システムからのデータ移行についてはどう計画すればよいかわからず、まだ具体的に検討できていない」ーー

こんな状況に悩みを抱えていませんか?

今回は、Salesforce導入時に大きな課題の1つとなる、既存システムからのデータ移行についてお話しします。
データ移行は、SFA切り替えプロジェクトの成功を左右する重要な要素です。
準備や計画が甘いと、以下のような問題が発生する可能性があります。

  • 必要な情報が不足し、営業チームの業務が停滞
  • データの変換やエラーの対処に時間がかかり移行が遅延
  • データの整合性が合わない状態で移行され、システム機能や業務に支障が発生

過去に他のSFAからSalesforceへのデータ移行を担当した経験を踏まえ、
Salesforceへのデータ移行の基本的な流れや注意点、そしてよくあるトラブルやその対策について詳しく解説します。

今回の記事はこんな方におすすめです。

  • Salesforceへの切り替えを検討中で、データ移行の計画をどう立てるべきか悩んでいる
  • 既存のSFAから移行する際、何を移行するべきか判断に迷っている
  • データ移行の際にトラブルを避け、効率的に作業を進めたいと考えている

Salesforce導入の全体的な流れ

Salesforce導入プロジェクトにおいては、多くの場合、既存のシステムからのデータ移行という工程が生じます。
SFAをSalesforceに切り替えるプロジェクトでは、以下の流れで進めることが一般的です。

①業務フローの設計

自社の営業プロセスをフローにし、いつ・だれが・どのような流れでシステムを活用するかの全体像を描きます。

②フェーズ設計とオブジェクト・項目の定義

営業プロセスに沿ってフェーズの設計を行い、どのようなデータ構造(オブジェクトや項目)が必要かを定義します。

③機能面の要件定義

Salesforceを通して実現したい機能を洗い出し、それに基づいて設定やカスタマイズを検討します。

④必要なレポートやアウトプットの定義

営業チームが必要とする分析やレポートを明確にします。

⑤データ移行の対象と手順決定

移行すべきデータや項目、移行の目的や優先順位を定め、移行手順とスケジュールを決めます。

データ移行については工程として最後に予定されるため、システムの機能要件やSFA設計と比べて後回しにされ検討が遅れがちですが、システムをトラブルなくスムーズに切り替えるためには十分な準備と計画が必要です。

データ移行をするメリットとデメリット

「そもそもデータ移行は必要か?」

まずはここから考えてみましょう。

Salesforce導入時にデータ移行を行うかどうかは、プロジェクトの方針や既存データの状況によって大きく異なります。
ここでは、データ移行を実施するメリットとデメリットについて整理します。

メリット

  • 再入力・登録の工数が削減できる
    進行中の商談や既存の顧客データをSalesforceに再入力する必要がなくなり、プロジェクト全体の作業量が軽減されます。
  • 営業ユーザーの利便性が向上する
    過去の顧客・案件情報をそのままシステム上で参照できるため、営業チームが迅速に対応できるようになります。特にリピート商談や過去の履歴が重要な業務では大きな利点です。
  • 導入直後から分析が可能になる
    過去データも揃った状態でSalesforceを始動できるため、Salesforceのレポートやダッシュボードを初期から活用し、状況把握や分析が可能です。

デメリット

  • 移行データの準備に時間とコストがかかる
    データ移行には、データの洗い出し、変換、整形、インポートなど、多くの作業工程が必要です。これにより、スケジュールがタイトになるリスクがあります。
  • システムエラーのリスク
    Salesforce側で作成・開発した機能が、移行データに対して正常に機能せず、エラーを引き起こす可能性があります。特にデータ形式や構造が異なる場合は注意が必要です。
  • 不正確なデータや重複データを引き継いでしまう
    特に顧客情報などのマスタデータについて、既存システムに不正確なデータや重複データが多い場合、それをそのままSalesforceに持ち込むと、データ品質が低下した状態で運用を開始することになります。

「移行しない」選択肢もある

既存システムのデータ規模や状況によっては、過去データを移行せず、Salesforceをゼロベースでスタートさせる選択肢も検討可能です。

例えば、

  • 過去のデータがほとんど参照されない場合
  • 既存データの品質が著しく低い場合

には、この判断が適していることもあります。

また、システムのデータ構造を抜本的に改変して制御や機能を開発するような場合、移行データをSalesforce仕様に合う形に加工することが現実的か、という点も検討する必要があります。
導入初期の入力負荷や業務進行において工数が大きくかかりますが、新しいシステムの仕様に沿ったきれいなデータベースを一から作り安全に運用をすることができます。

移行を行わない場合、

  • 並行稼働期間を設けて、切り替えまでの間は両システムでのデータを入力する
  • 旧システムの情報はバックアップを取って閲覧できるようにしておく

など、業務進行に支障をきたさないための運用計画を事前に立てる必要があります。

また、関連部門への説明を十分に行ったうえで、余裕を持ったスケジュールで進行することが望ましいです。

上記に挙げたメリット・デメリットを踏まえ、データ移行の実施有無を検討しシステムの切り替え計画を立てましょう。

データ移行範囲と移行内容を決定する際の4つのポイント

データ移行を成功させるためには、移行するデータの範囲や対象を慎重に検討する必要があります。
ここでは、データ移行範囲を決定する際に考慮すべきポイントを紹介します。

データ移行を実施する場合、データ移行を行う対象を決める必要があります。

「既存システムに持っているデータはすべて持っていきたい」
と考えがちですが、本当に必要なデータのみを移行することがおすすめです。

ポイント①:移行するオブジェクト・項目の決定

Salesforceにデータを移行するにあたって、まずはオブジェクト単位で移行の要否を検討します。

システムが機能するための最低限必要なデータ

移行後のデータが、Salesforceで正しく機能するために必要なオブジェクト・項目をまず決定します。
Salesforce上の必須項目や、入力規則に使用されている項目、開発機能において処理の条件に使われている項目等が対象になります。

業務上必要なデータ

過去の商談履歴など、Salesforceを使った顧客・案件管理を行う上で、営業ユーザが参照する必要があるデータを決定します。

集計・レポート上必要なデータ

集計・レポートとしてアウトプットを行うために、必要なデータを決定します。

もちろん、既存システムと全く同じオブジェクト・項目の定義でSalesforceに切り替える場合、項目を絞らずに移行することも可能ですが、多くの場合、項目や構成の見直しをしたうえで切り替えを行うことになります。

Salesforceの仕様に合わせたデータの加工が必要になるため、データと項目の移行/加工要否・移行範囲を上記の観点から検討しましょう。

ポイント②:過去データの必要性と範囲

過去の商談履歴や顧客データが業務に不可欠な場合は、移行対象として検討する必要があります。

ただし、すべてのデータを移行するのではなく、特定期間や特定条件に絞ることで作業量やエラーのリスクを減らすことができます。

業務上の観点

営業が過去の商談履歴や顧客情報をSalesforce上で参照する必要がある場合、どこまで過去の情報を参照する必要があるかを検討します。

例)
前年度の商談履歴を見たうえで営業を行うので前年データまでは確認する必要がある

集計・レポート上の観点

Salesforce上のレポートにおいて、どの期間のデータが必要かを検討します。

例)
3か年の数値推移・比較が必要

ポイント③:データ変換やクレンジングの必要性

データ変換が必要な場合

Salesforceの項目定義に合わせるために、既存システムのデータをSalesforceに合わせて変換する作業が発生します。

例)
商談ステータスを「5段階」から「6段階」に変更する場合

欠損データの補完やクレンジングが必要な場合

Salesforceの仕様上必須にしていて埋まっている必要がある項目について、既存システムにデータが埋まっていない場合や、テキスト型の項目を選択リスト形式に変更して保持する場合などは、データをクレンジングしてSalesforceの値にマッピングする必要が生じます。

Salesforceの設定・機能上必須だが、どうしても移行データについてその形に合わせて加工して移行することができない場合、Salesforceの機能・設計上で、移行データに対する例外対応を検討する必要があります。

重複データに対する対応

顧客データ等、既存システムのマスタデータに重複が存在している場合に、移行データ作成のタイミングでデータを統合したうえで移行する、ということを検討することもできます。

一度重複した状態で運用を開始すると、基本的には手動で1つ1つ統合作業を行っていくことになるため、ある程度まとめてきれいに統合したい場合には、移行データ作成のタイミングで統合をしたうえで移行すると効率が良いです。

重複データをきれいにできるメリットはあるものの、重複の判定と統合先の選定、および各種移行データのマッピングの変更など、膨大な作業が必要になります。

移行ミスの要因にもなりうるため、

  • テスト含めた移行準備期間が十分にあるか
  • 本当に統合した状態で移行する必要があるか

を踏まえて実施有無を決定しましょう。

ポイント④:データ移行とシステム切り替えスケジュールの計画

以上のような検討事項を踏まえ、データ移行とシステム切り替えのスケジュールについて計画を立てます。

データ移行作業に必要な時間を確認

データ移行範囲と内容、変換ロジックを踏まえ、既存システムのデータ抽出から移行作業完了までに要する時間を見積もります。

データ移行時にはインポートエラー等が起きることも多く、何の問題もなく移行が完了することの方が少ないため、余裕をもった見積もりを行う必要があります。

データ移行のためにシステムを停止できる期間を確認

システム切り替え直前のタイミングで、既存システムの停止期間を設け、データを抽出して移行作業を実施する必要があります。

日常業務に致命的な影響を与えない範囲で、システムを止めることができる期間がどれくらいとれるかを確認します。

業態にもよりますが、

  • 土日祝日等、業務に支障が少ない日を選んで
  • 連続停止期間をできる限り長めにとれるように

調整をします。

まずは、

  • 変更がない過去データを移行し
  • 更新が発生する進行中のデータは切り替え直前に移行する

といった段階移行も有効な手段です。

並行稼働期間の有無を検討

システム稼働開始日を境に、一度に運用を切り替えるか、一定期間並行稼働期間(二重で運用する期間)を設けるかを検討します。

並行稼働を行う場合、ユーザ側の負荷は高くなりますが、データ移行の作業を複数回に分けて実行することができます。

この判断はデータ移行以外にも様々な考慮事項を踏まえて決定することになりますが、
データ移行量が多く作業に時間がかかり、システムを連続停止できる期間内に作業を完了できない場合には、並行稼働と段階移行も検討する必要があります。

切り替えスケジュールの策定

移行作業に必要な時間と、システムを停止できる期間を踏まえ、具体的なシステム切り替えタイミングとデータの移行作業日を決定します。
複数回に移行作業を分けたり、並行稼働を実施する場合には、回ごとにデータを明確に抜け漏れダブりなく抽出・移行できるようにしておく必要があります。

データ移行は一回限りの作業で、失敗が起きると即リリース遅延につながる重要な作業です。
特に大規模なデータ移行の場合、移行作業においても事前にリハーサルを行うなど、万全を期したうえで余裕を持ったスケジュール計画を心がけましょう。

まとめ

データ移行とSalesforce導入を成功させるために、以下の点に注意して計画を進めることが重要です。

必要なデータと不要なデータを整理する

何を移行し、何を移行しないかを明確にしましょう。「なんとなく全てのデータを移行しておく」はNGです。
Salesforce導入の目的に照らして、必要なデータに絞りましょう。

データのクレンジング・変換方法をあらかじめ決定する

既存システムのデータをクレンジングしたり、欠損している項目を補完したりする場合、できる限り手作業ではなく条件をロジック化して一括処理できるような方法を確立しておきましょう。

データを確認しながら手作業でクレンジングが必要になる場合、ボリュームとクレンジングにかかる期間を見積り、現実的なスケジュールを確保しましょう。

移行データに対して、システムが正常に機能することを確認する

移行データに対して、Salesforce上で操作を行った際に、正常に機能するか、エラーが発生する箇所はないか事前に確認をしましょう。

移行スケジュールと実施時期を慎重に検討する

移行作業にかかる時間と、切り替えに伴うシステム停止が可能な期間を踏まえ、段階的な移行も含めスケジュールを検討しましょう。
事前に十分なテストとリハーサルを行い、本番で想定外のエラーや極力起きないような準備をすることが重要です。

データ移行はSalesforce導入までのプロセスの中で一番最後に行われるため、検討と計画が後回しにされがちですが、導入直後の運用がスムーズに進むかは、データ移行にかかっています。

データ移行での失敗はあとからリカバリが難しい場合も多く、正確性とスピードが求められます。
切り替え時期が近づいてから慌てて準備をするのではなく、プロジェクトの初期段階からデータ移行も含めたスケジュール計画を実施し、Salesforce導入を成功に導きましょう。

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